ヤクシマ三丁目

オリジナル小説を公開しています。声劇台本の告知、小説化なんかも。同人誌にしてコミティアとか、二次創作でコミケに出たり。

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-二人の会話- 火の緋色 01 

  限りなく消えてしまえと願ったのに、目の前では河図島が変わらずほほえんでたたずんでいた。
「どうして?」
 聞こえてきた音が、何か判別できない。
「どうして?」
 河図島にはその音が聞こえないのだろうか。変わらない、変わらずにたたずんでいる。
「どうしてなの?」
 三度の音にも反応しない河図島は、やはり変わらずほほえんでいて、
「やめて! そうやって、私の言葉を無価値にしないで!」
 音が代弁する。なんの音だろうか、私には判らないかもしれない。
「いつもほほえんでたたずんで……私の側で! その、変わらない態度が、私は――」
 代弁の音。でも、駄目。その続きを言ってしまっては。私は、このままでも、別に良いのに。
「――嫌いだった!」
 ほら、私の心のうちが、ほどけ、届いてしまう。
「……そう、だったんだ」
 届いた。変わらなかった河図島が、ついに言葉を紡ぐ。
「僕は、これが普通だったから。変わらないとか、無価値にしているなんて、思ってもみなかった」
 変わらない。言葉が発せられている以外、変わらない河図島。
「私の一方的な感じ方だから、別に、悪くない……悪くないけれど、嫌なの!」
「そう、だったんだ」
「そうなの、嫌なの!」
「そっか、そっかそっか」
「だから――だからぁ!」
「だから、僕が、嫌い、か」
「そう、それよ、それ! 嫌、嫌嫌、嫌だった!」
「ごめんね?」
「どうして、謝る……」
「んー、あんまり判らないや。ほら、いつも言ってるだろう? 僕は、思ったままに行動してるって」
 良く聞く台詞。河図島は、あるがままに、ただそれだけで生きる。
「だから、ごめんね? って聞くのは、聞くべきだって僕が思って、ただ実行しただけ」
「こうして変わらず笑って立っているだけの僕も、僕が選択した僕でしかないし」
「ここに立って、トキの声を聞いているのも僕の選択だし」
「多分、ハンカチで涙をぬぐってあげたいと思っているのも、僕だ」
 言い切ってから、
「ほんとうにさ、自分勝手だよね?」
 だから、どうして、
「どうして、聞くのよぉー」
「主体性が無いのかな? ――あぁ、待って待って、また泣かれちゃったら、ハンカチ足らなくなるよ」
 気づけば側にいた河図島に、涙をぬぐわれている。
 泣いていたのか。気づきもしなかった。
 どうしてこうまで追い詰められてしまったんだろうか。ただ、話すことがあった、でも、こんな話をしたかった訳じゃなかった。
 なのに気づけば、泣いて、思っていたことを口にして、涙拭われて。
「意味わかんない、どうしてこうなったのか――」
「そうだね。でも、良かった」
「何がよ」
「んー、そうだねー」
 いつもと変わらない。ほほえんでいて、近くに立っていて。でも、いつもより笑みを深くして、
「心に触れられて、うれしかった、からかな?」
 だから、どうして。


02


 
 火の緋色、はじまります。

 ストーリーライン上にない話にはなりますが、二人の立ち位置とか判りやすい……かな?

 ちぐはぐなんだけど、どっかでかみ合う二人の物語です、気になったら、続きまで少しの間、覚えていてくれるとうれしいです。


 

テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

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